美容室リクルートの昔と今
15年ほど前までは、美容学生との大きな接点はガイダンス。
いかに魅力的なブースやパンフレットを作るかが大きく結果に繋がる時代でした。
そして、そもそもブースを見てもらう為の動線が作れていないサロンがリクルートに苦戦している、という構図が生まれていました。
学生は最初に何をもってサロンを知るのか?その後、何を通して深掘りするのか?深掘りできる場所はあるのか?
そういった課題に向き合いながら、美容室のリクルートは時代と共に少しずつ変化していったと思います。
特に新型コロナウイルスの流行以降、美容室のリクルートはSNS中心へと大きく変化しました。
求職者は、お店や美容師のInstagramを通してサロンを知って判断するケースが増えました。こうした変化に伴い、サロン側にもSNSの設計や採用サイトなど「知ってもらった後にどう深掘りしてもらうか」という新たな課題が生まれました。

「知る」から「採用」までの動線
感染症が落ち着き始めると、SNSを入り口としてサロン見学まで繋がる流れが確立しつつありました。
業務委託や大きいサロンなど、リクルートに力を入れているサロンでは「リクルート専用サイト」をしっかりと設計するところも増えました。先ほど挙げた採用コンセプトやサロンメッセージ、代表の言葉、働くスタッフ同士のクロストークなど、コンテンツが充実していることから求職者が深掘りするには打ってつけの環境です。
その中でも、リクルート専用サイトまで見てもらえるサロンと見てもらえないサロンには違いがあります。
それは、サイトを「作って終わり」にするのか、そこへ人を導き続けられるのか、という違いです。
SNSや学校との接点を持っているサロンは、そこから採用サイト、サロン見学へと自然に導くことができます。一方で、接点を持たないサロンは、どれだけ魅力的なサイトを作ってもそこに辿り着いてもらえないという問題が起こります。
では、どうすればもっと気軽にサロンと接点を持ってもらえるのか。
そもそも、サロン見学自体が一部の学生や求職者にとってはハードルの高いものです。自分からサロンに連絡し、日程を調整し、当日は一人でお店へ足を運ぶ。そこで初めてスタッフやオーナーと対面する。それを何社も繰り返す。発信が少ないサロンだと、求職者からしたらどんな人が待ち受けているのか分からないお店にDMを送るのは非常に勇気のいる行動です。
だからこそ、SNSのDMだけでなく公式LINEやメールなどの窓口を増やす、というのは一つの効果的な手段です。また、1対1のサロン見学ではなく、サロン対求職者複数人のサロン説明会という手段を取ることでお問い合わせの増加に繋がったケースもあります。
もちろん、これらはどれもサロンやターゲットによって有効かどうか変わってきますが、どの手段を取るにしても共通して重要なのは、最初の「知る」ところから「採用」という最後までの動線をサロン内でいかに作り上げられるか、というところです。
キーワードはサロンの「色」
動線が整っていれば採用に繋がるのかというと、そう単純でもありません。その先で必要になるのが、自分たちの「色」を伝えることです。
そのサロンにいる人、空気感、価値観、考え方、技術などに表れる「らしさ」をどれだけ伝えられるかで、採用活動の結果が大きく異なります。特に、サロン見学や説明会などはお互いに直接目を見て話せる貴重な機会です。SNSで発信できる内容とは別に、各サロンの雰囲気や想いなど、言葉や画面越しでは伝えきれないことを表現するのに最適な場所です。そして、その入り口となるSNSなどでいかに「らしさ」の中にある魅力を感じてもらうかがポイントとなります。
かっちりとしたデザインにすると、かっちりした人やそういう雰囲気が好きな人が集まる。
ゆるい雰囲気のデザインにすると、感度がファッション寄りの人や柔らかい雰囲気が好きな人が集まる。
熱いデザインにすると、熱い想いに共感した人やそういう人の元で働きたいと思っている人が集まる。
キービジュアルも、どんなニュアンスを理解してくれる人に来てほしいのかによって、他サロンとの差別化に繋がります。仮にハイトーンを売りにしているサロンでも、同じ「ハイトーンのモデルで撮る」という手法の中でハイトーンの色の違いが伝わるように撮るのか、ハイトーンが映える色味で撮るのかでは、印象は大きく変わってきます。ビジュアル以外にも、言葉遣いの違い、誰が発信するのか、何を発信するのか、など若干の違いで問い合わせをする人は変わってきます。
こういったサロンの「色」が様々なところで統一して出てくると、リクルートが上手くいく確率が高くなります。



「働きやすい」=誰にとって?
「色」を伝えるだけでなく、そこに「信頼」がなければ採用には繋がりません。
どの美容室もサービス内容は大きく変わらない。だからこそ、その美容室を選ぶ理由を働くスタッフやお客さんにしっかりと認識してもらうことが大切だと考えています。そんな中でSNSが出てきたことにより、いかに誠実であるかも採用に影響する大切なポイントとなってきています。
SNSを通して問い合わせをした求職者が、実際に対面で顔を合わせた時や入社した時にギャップが生まれないように、差別化を図りながらターゲットに対して信頼を与えられる言葉やデザインを発信していくことが大切になってきています。
「働きやすい」=誰にとって働きやすいのか?
働きやすい、と言ってもそれは誰にとっての働きやすさなのか。新卒にとってなのか、中途採用者にとってなのか、子育てしながら働く人なのか、車通勤の人なのか。
良いことだけ載せようと思えば載せられる今の時代に、発信内容でいかに誠実に、信頼を積み上げていけるのか。
これからのリクルートでは、そこが問われているのだと思います。



求人とは…
つまりは、「人と人が分かり合えるような空間や色を表現できるかどうか」。
その差がリクルートの良し悪しに繋がってくる、ということです。
今はWeb広告もSNSも、以前よりずっと手軽に始められるようになりました。AIを使えばそれらしい画像や動画、文章まで短時間で作ることができます。だからこそ、これからは「綺麗に作る」だけでは差別化になりません。
何を選び、何を伝え、何をあえて伝えないのか。
そこに、そのサロンの「色」が出るのだと思います。
美容室は商品などもなく、働く人が売りだからこそ「どういう人を採用したいのか」「自分たちはどういう人間なのか」その「色」をしっかり表現することが、これからのリクルートにおいて重要になってきます。




リクルートでのデザイン=信頼
そのサロンがどんなサロンなのか、どんな「色」や「らしさ」を持っていて、どう肉付けし、表現できるのか。
そこまでを考えるのが、私たちの仕事です。分からなければ一緒に考える。課題を見つけ、原因を探し、その原因をどう解決するか。その手段としてデザインがあるからこそ、「色」と「信頼」をデザインを通して伝えていく。
求人は、すぐに結果が出るものではありません。
中途採用では、人によって転職を考えるタイミングが異なります。新卒採用では、募集していること自体を学生や先生に認知してもらう必要があります。だからこそ、採用活動は一度作って終わりではなく、継続して発信し、改善し続けることが大切です。
「知る」から「採用」まで。その間にある一つひとつの接点を、どう設計するのか。綺麗で、程よく生っぽく、誠実で、新鮮な情報が得られる。そんな仕組みを、デザインを通してどう作っていくのか。
それが、私たちが美容室のリクルートと向き合うときに大切にしていることです。






